日本製紙等が航空燃料SAFの原料生産で新会社立上げ

日本製紙、住友商事及びバイオマス関連のスタートアップGreen Earth Instituteの3社で、持続可能な航空燃料(SAF)の原料を生産・販売する共同出資会社を2025年3月に設立すると発表しました。日本製紙の岩沼工場内に生産設備を導入し、SAFの原料となるバイオエタノール等を生産する。GEIが開発した低コスト生産方式を採用し、27年には1,000キロリットル以上生産する予定であり、2030年頃までには生産能力を数万キロリットルに増強予定です。尚。国交省は2030年には国内で172万キロリットルの量が必要になると考えているとの事です。バイオエタノールの原料としては近隣で調達できる木質チップを使用し、「地産地消」により輸送時に発生するCO2の排出量も少なくて済むとの事です。日本製紙としては将来的には他の工場に設備導入する事も検討しています。尚、バイオエタノールはサトウキビや木材等の植物由来のバイオマスを原料として作られたエタノールです。そして、化石燃料に比べてライフサイクルにおけるCO2排出量が少ないことから、地球温暖化対策や石油代替燃料として注目されています。また、バイオエタノールはガソリンへの混合や燃料電池、化粧品などへも活用できとの事です。

 

                    <出典;日本経済新聞 2025年2月14日 朝刊>

 

<バイオエタノールの詳細資料は以下より>

https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=6

 

<SAFの詳細資料は以下より>

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/saf.html

 

 

王子HD最先端半導体向け材料に参入(木から半導体材料)

王子ホールディングスは2ナノ(ナノは10憶分の1)メートル世代以降の最先端半導体向けの材料に参入する。木質由来の成分を使った「フォトレジスト(感光材)」を開発し、2028年に事業化を目指す。国内の紙需要が減る中、紙の材料である木質や既存設備を生かした化成品の製造を成長の柱に定める。(情報源;日本経済新聞 2025年1月15日朝刊)

 

 

紙以外を作るビジネスへの転換を図る王子HDは木質から取り出した成分を原料にした「バイオマスレジスト」の開発を発表しました。30年代の年間売り上げは100憶円を目指す。レジストは半導体材料の一つで回路を描く為に不可欠な材料です。基盤(ウエハー)に塗布して光を当てるとその部分の成分が変化し、パターンを焼き付けます。最終的にレジストを除去する工程を経てウエハーに回路を形成されます。半導体の性能を高めるには、この回路の微細化が必須となります。現在主流の「化学増幅型」と呼ばれるレジストは更なる微細な回路形成には限界があるとされています。王子HDは木質由来のレジストを開発し、半導体の2ナノ世代以降に求められる性能をすでに確認しています。同社のレジストは環境負荷が少ないことも利点です。従来のレジストは光に対して反応感度を上げる為、有害性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)が使われるケースが多かったのですが、バイオマスレジストは木質由来の高分子(ポリマー)と溶媒だけでできている為、露光によるポリマーの分解のし易さが一般的な従来品と比べて約8倍と高く、PFASの添加剤が不要となりました。微細な回路は添加剤のわずかな濃淡でも影響を受けやすく、添加剤を無くす事でパターンの解像度が高まる結果となりました。これまで木質由来の素材を半導体材料に活用するには不純物(金属成分)の除去が課題でしたが、王子HDは不純物を除く精製技術を向上させて克服しました。医薬品や食料向けでバイオマスを検討する中で、蓄積する知見が効果を発揮しました。今後、王子HDは半導体以外の新事業育成にも力を注いでいくとしています。木質資源から化学品などを作る「木材バイオビジネス」へ事業構造の転換を進める意向です。エタノールやポリ乳酸のもととなる基幹物質「糖液」も、王子HDの次の成長ドライバーと位置付けています。この「糖液」は酵素を用いた独自技術によってパルプから製造されますが、2024年12月米子工場内に糖液のパイロットプラントを稼働させました。  また、2025年3月には同工場でバイオエタノールの生産も始める予定です。更に2028年にはポリ乳酸年間1000TONの設備稼働を目指しています。以上より、2030年代には糖液、バイオエタノール、ポリ乳酸で年間300憶円以上の売り上げを目指しています。

 

<参考資料>

20250120152358348

 

 

住友大阪セメントのCO2活用新事業情報(人工石灰石の開発・生産)

住友大阪セメントはセメント工場から排出された二酸化炭素(CO2)を反応させて製造する「人工石灰石」を商標化する。石灰石は大気中のCO2を吸収する為、様々な産業で活用できる。既に路面標示用塗料への活用が決まった。国内のセメント市場が年々縮小するなか、工場の脱炭素化を進めると同時に新たな収益源開発へ繋がるものと考えられる。(情報源;日本経済新聞 2025年1月15日朝刊)

 

 

栃木県佐野市にあるセメント工場の一角で人工石灰石の実証プラントの建設が急ピッチで進む。2025年から稼働を開始し、設備の運用や量産化技術の実証を進める。順調に進めば年間270TON製造できるようになる。この人工石灰石の材料となるCO2はセメントの製造時にでてくる。一方、酸化カルシウムはセメント工場で燃やすゴミの焼却灰や建設材料の石膏ボードなどの産業廃棄物等から得られる。尚、CO2回収に向けては「バイポーラ膜電気透析装置」と呼ばれる工場排水から酸とアルカリを越し取る機械に着目し、セメント焼成時に出る排ガスを該装置で取り出したアルカリ液に通す事で、CO2だけを95%という高効率で捕捉できる方法を独自に生み出した。と同時に、廃棄物中にあるカルシウムも同装置から取り出した強酸で抽出し、CO2と反応させることで人工石灰石を低コストで作り出す事に成功した。今回展開する新事業はセメント工場の脱炭素化、産業廃棄物受け入れ拡大、その成果物としてCO2を吸収する人工石灰石開発と、まさに一石三鳥で環境対策に貢献できるものであると胸を張る。できた人工石灰石は低炭素コンクリートに利用する事を検討。更に製紙や樹脂など他産業向けの充填材などへの活用も狙う。今回は路面標示用塗料への活用が決定した。路面標示用塗料の約35%~70%には炭酸カルシウムが充填材として利用されているが、そのうちの約15%を人工石灰石に置き換える。塗料の施工時や消去時に出る廃棄物はカルシウムを含んでいる為、もう一度CO2を固定する事ができ、何度でも人工石灰石にリサイクルができる。セメント産業は全産業の中で4番目にCO2排出量が多く、同社のCO2排出量は700万TONにも及ぶ。この取り組みが成功する事を大いに期待します。尚、該事業の計画は人工石灰石の実証設備を28年には2700TONまで拡張し、40年には実際の商用設備で年間70万TON以上の生産を目指すとの事です。

 

 

<参考資料>

20250120134530506

 

 

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